忍者ブログ
自重できなかった人の何かの捌け口
[180]  [179]  [178]  [177]  [176]  [175]  [174]  [173
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

難波江くんにこんな時期があったっていいと思うのです












------------------------------------------------

昔から遠征に行くときは高木と一緒だった。青城アカデミーは小さくはないテニスクラブだったが、同じ年代で関東以上に行くようなメンバーは、自分と高木しかいなかったからだ。
小六の頃、ちょうど試合中に感情が昂ぶってしまうのをなんとかしようと試行錯誤していた時期。遠征先で、どうしても寝付けないことがあった。コーチに言われた通り、自分の感情をコントロールしようと努力はしていたが、何かのきっかけで抑えきれなくなる。そういうことがまだ時折あって、それが不安で仕方なかったのだ。
翌日に試合を控え、きちんと睡眠をとらなければいけないとわかっているのに寝付けない。無意味な寝返りを何度も打っていると、隣の布団から高木の規則的な寝息が聞こえてくる。それがまた、焦りとなって眠れなくなる。そんなときは、いっそ開き直って寝るのを諦める。
布団に入ったまま、暗がりの中、隣の高木を眺めてみる。寝息と共に、布団が上下している。寝なければいけないと思わなければ、高木の寝息も心地良く聞こえる。
これなら寝られるような気がする。
そう思い始めたとき、不意に高木が寝返りを打った。
こちらを向いて静かな寝息を立てる高木の顔が、手を伸ばせば届きそうなところに近づいていた。見慣れているはずなのに、新鮮な気がするのは何故だろうと考えて、そういえばと思い当たる。いつもは目が合った途端、睨まれたり、すぐに顔を背けられたりするのに、寝ている高木にはそれがないからだ。面白半分に高木の顔を見つめていると、意識がどうしても左目の目元に向かってしまう。目にだいぶ近い位置にぽつんとある泣きぼくろ。つい出来心で、そっと手を伸ばしてみる。
伸ばした指先が高木に触れる。そのとき、高木が身じろいだ。起こしてしまったかと慌てて手を引くと、高木が小さく呟いた。
「……なばえ」
驚いて、心臓がどきどきした。でも、嫌な感じではなかった。
不思議と楽しい気分になったので、布団を被り直した。なんだかよく眠れそうな気がした。










ガキの頃から遠征に行くときは常に難波江と一緒だった。同じテニスクラブで同じ学年。同じ大会にエントリーすれば、必然的に同じ部屋にされた。気に入らないが、勝手を知っていると思えば悪くもなかった。
ただ、一つだけ気になることがある。
元々神経質な性格ではないから、試合前に眠れなくなるということはなかった。難波江も神経質という感じではないが、遅くまでノートに何かを書き込んだり、パソコンを手に入れてからは、それに何かを打ち込んだりしていることが多かった。だから、夜は自分が先に布団に入ることになる。
難波江が何をしていようが、横になれば眠くなるもので、大体はそのまま寝てしまう。でも、稀に寝付けなくて横になったまま、うとうとしている。そんなときのことだ。
電気が消され、難波江が布団に入る気配がする。それから少し間を置いて、誰かが顔に触れるときがあるのだ。誰かといっても、部屋には自分ともう一人しかいないのだから、難波江以外のはずがない。だが、難波江が何故そんなことをするのか理由が全くわからない。
気付いたときに目を開けて問い質せばいいのだろうが、一瞬のことなのでいつもタイミングを外してしまう。翌朝、難波江に尋ねたこともあったが、夢でも見たんじゃない?と軽く流された。
確かにいつものことでもないし、気になるかと言われれば、そうでもない。やっぱり難波江の言う通り、夢のかもしれない。
深く考えても仕方がないので、そういうことにしておこうと思う。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
プロフィール
HN:
akr
性別:
女性
自己紹介:
半田と文貴を養い隊

スポーツ特化ノート
マイスターとキャットルーキー
好きな人 を捕まえたい
と仲良くなりたい…
リンク
カウンター
バーコード

忍者ブログ[PR]