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自重できなかった人の何かの捌け口
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景凰










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特に自慢できるわけでもない特技というのを、人は大概持っている。凰壮の場合、それは『寝たふり』だった。
幼い頃、無理に夜更かしをしてリビングで寝てしまい、親がベッドまで運んでくれたという経験がある人は少なくないだろう。それが降矢家の場合、三人の子どもが一緒にいるため、途中で親に起きていると気付かれてしまうと、否応なく自分でベッド行く破目になってしまう。
往々にして、虎太は熟睡しているので問題なく運んでもらえるのだが、竜持は少し神経質なせいか、少し触られただけで目が覚めるようで、自分でベッドに行くことが多かったと思う。それでも竜持は、その頃から親に迷惑を掛けるのを好んでいなかったので、本人は何とも思っていない風だった。
そして凰壮はといえば、それはもちろん運んでもらいたいと思っていた。
しかし竜持のその、親に迷惑を掛けたくないという殊勝な心掛けのとばっちりを、凰壮はいつも受けていた。竜持は必ず目が覚めると、隣で同じように寝ていた凰壮の肩を揺さぶりながら、凰壮くん、ベッドに行きますよ、と言う。そこで親に起きたと判断されてしまうと、そのまま竜持と歩いて行かなければならなくなるので、凰壮は眠いながらも必死に寝たふりをする。特技はその名残、というわけだ。

だからその日、うっかり景浦の部屋でDVDを見ながら寝てしまい、ベッドに運ばれているところで不意に目が覚めた凰壮は、そのまま寝たふりを決め込んでいた。この歳になって、男のくせにお姫様抱っこされている最中、景浦と目を合わせるなど、恥ずかしいにもほどがあった。
さすがに年季の入った寝たふりは、景浦に気付かれることはなかったようだ。静かにベッドに下ろされて凰壮は一息ついたのだが、なかなか景浦の気配が遠ざからない。そのせいで、凰壮に不安が募る。
景浦は、実は寝たふりに気が付いていて、面白半分でいるんじゃないだろうか。そう思うと、無性に腹が立つ。
凰壮は、いっそ声を掛けられる前に、と目を開けると同時に起き上がった。その瞬間……
ごつ、と何かに顔面が当たって、凰壮は一瞬でまたベッドに沈んだ。痛みに耐えて目を開けると、目の前で、同じように顔を押さえる景浦の姿。
何が起きた?と考えようにも、口元にじわりと広がる痛みが邪魔をする。冷静になるには、もう少し時間が必要のようだ。
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